ネイティブ・スピーカーとノン・ネイティブ・スピーカー

 巷では、「正しい発音じゃないと英語は相手に伝わらない」、「子どもの頃から英語に取り組まないと良い発音は身に付かない」など、いろいろな噂が囁かれていて、それに関する書籍もたくさん出ています。どれも間違いではないし、きれいな発音の英語を、正しい文法を使って話せることに越したことはないと思います。

しかし、英語を母国語としている、いわゆるネイティブ・イングリッシュ・スピーカーって世界に何割いるかご存知ですか?

この質問に答える前に、ここで使いたい言葉の説明から。

・母国語…国で使われている言語。私たち日本人の母国語は、日本語です。

・母語…その人自身が育てられた言語。私たち日本人の大半は日本語です。人種が混ざっている国では、両親の言語が違うこともあり、母国語と母語が違うこともあります。

・実用語…生活で使っている言語。私は日本語に加え、仕事で英語を使っているため日本語と英語が実用語です。

私のカナダ人の友達は、カナダで育ったので母国語は英語です。しかし、彼女のお母さんが香港人なので、彼女の母語と実用語は英語と広東語です。

この3つの違いを理解してもらったところで、この章の肝心なところを見ていきましょう。

一緒に考えてみてください。

英語を母国語としている、いわゆるネイティブ・イングリッシュ・スピーカーって、世界の何割だと思いますか?

答えは、世界中で実用的に英語を使っている人は4人に1人だと言われています。

その4人に1人、たったの2割がネイティブ・イングリッシュ・スピーカー。母国語や母語を英語としている人たち。イギリスやアメリカ、オーストラリア、カナダの方々です。

それ以外の8割の人たちは、ノン・ネイティブ・イングリッシュ・スピーカー。母国語、母語が英語でない人たち。私たち日本人のように第二言語として英語を使っている人たちです。

この比率を見たときにどう感じましたか?

多いと思いましたか?

少ないと思いましたか?

私は正直、「たったの2割?」と思いました。

 イギリスに2年間住んでいましたが、私が住んでいたのはロンドンだったこともあり、まさに人種のるつぼでした。イギリス人に会うよりも、違う国の人に会うことの方が多く、バスや地下鉄の中では、英語以外の言語が飛び交っていることの方が多かったです。みんなが第二言語として英語を使っているので、もちろんその国独特の訛りもあります。

インド人の方は特に訛りが強く、インド語を話しているテンションで英語を話しているので、最初の数分間は、英語を話していることに気が付かないこともしばしばありました。(最近、インド英語のみ聞き取ることができる人に出会いましたが、奇跡だと思っています。むしろその能力、とっても欲しいです。)でもそんなインドの方たちも、イギリスで働いていますし、英語を使ってコミュニケーションを取っています。

 私が生徒さんにお伝えしていることですが、英語は「シンプルに簡単に」してくださいということです。生徒さんの中には、すでに英語が得意な方もいます。そんな方たちは、英語が得意なために、難しい単語やきちんとした文法を使わないといけないと思って、さらに混乱されるんですよね。

でも先ほどお伝えした八割の方たちは、私たちと同じようにノン・ネイティブ・イングリッシュ・スピーカーです。その方たちも、私たちと同じようにもちろん英語は完璧ではありません。たとえば、TOEIC700点以上のスコアを保有している人が、辞書で調べた単語を駆使して作ったメールを相手に送っても、「これはどういう意味?」という返信が。少し考えたら分かることなのに、仕事だから、よりきちんとした英語を使わなきゃと思ってしまって、難しく難しく考えてしまうんですね。

英語はあくまでも、コミュニケーションツールです。英語を使うのは世界共通語だから。それ以外の理由はありません。母国語が違う人とコミュニケーションを取りたいがために英語を使っているのに、その英語を分かりづらくしていたら意味がありません。

日本にいる英語講師の先生方がたいてい英語圏のネイティブ・イングリッシュ・スピーカーなために、多くの方が、きちんとした英語を話さなくてはと思うかもしれません。しかし、実際には8割のノン・ネイティブ・イングリッシュ・スピーカーと話すことの方が多いです。

相手に伝わるように「シンプルに簡単に」。

これが英語で世界の人たちと会話するための忘れてはいけない大切な基本です。